Madame Keiko Hiramatsu2018.09.12

レストランひらまつ 広尾に訪れる人誰もがエントランスで出迎えるマダムの笑顔から、ここでのストーリーの始まりを実感するのではないだろうか。

 マダム平松慶子は、夫であり、創業者であるシェフ平松宏之とともにレストランひらまつ 広尾を守り続けてきた人物。そして、今なおレストランを象徴する存在として、多くの人を魅了し続けている。

「学生時代に知り合った時から、将来は“マダム”になってくれと言われていたんです」

屈託なく笑いながら当時の思い出を語るマダム慶子。結婚を経てパリで修行。帰国後に開いた西麻布のレストラン「ひらまつ亭」。

「まだオーナーシェフというスタイルのレストランがほとんどない時代でした。私もフロアに立ってすべてのオーダーをお伺いするお仕事をしていました。当時のお客様は今でもいらっしゃってくださる方が多く、そんなご縁が続くレストランとはなんて幸せな仕事なんだろうと思っています」。

料理に精魂を傾けるシェフ平松といつも笑顔でお客様と語らうマダム慶子。レストランでの役目は違えど、常に同じ方向を向き、一心同体でレストランを支える大切なパートナーとして、マダム慶子はひらまつ亭にとって欠かせない存在となってゆく。それは同時にマダム慶子のおもてなしの才能が開花することでもあった。

その後ひらまつ亭は押しも押されもせぬ人気店に成長。“伝説のレストラン”とまで言われるようになる。

もっと多くのお客様に楽しんでいただきたいとの想いを胸に、1982年にオープンしたひらまつ亭は、現在の地・広尾に移転。1988年に「レストランひらまつ 広尾」として新たな一歩を踏み出す。

「いろいろな偶然が重なって広尾にレストランを構えることになったのですが、それまでの32席の小さなレストランから一気に3フロアもあるレストランになったのですから少し不安もありました。でもこのエリアにたくさんのレストランができて、フランス料理を楽しむという文化が日本に根付き始めた時代だったこともあって、とても順調にスタートできました。ありがたいことです。」

月日は流れ、創業から35年以上が経った。ひらまつの“技”と“心”は平松宏之から平松大樹へ引き継がれ、レストランひらまつ 広尾は更なる進化を遂げた。それでもレストランが醸し出すやわらかな空気は全く変わらない。

「時代が変わって、新しくなって、それでも私が“マダム”としてここにいる。そのことが、ひらまつの原点でもあり変わらず持ち続けている“ひらまつ”らしさの一つでもあるかもしれませんね。」

チャーミングで、笑顔を絶やさず、一生懸命に真心こめてお客様を想う。マダム慶子にとって、それはごく当たり前のこと。天性、と言っても過言ではないだろう。レストランひらまつ 広尾に寄り添い続けて36年。これからもレストランを温かく見守る存在として、マダム慶子は今日もスタッフとともにお客様に笑顔を届けている。

Home
Backstage
Madame Keiko Hiramatsu
Words :
Paragraph Ltd.
Photography :
Masashi Nagao
Keywords :
hiroo
madam