Rich Environment produces Rich Food Ingredients
– Hiroshima Vol.2 –2019.07.10

愛情が育てるグリーンアスパラガス

広島の内陸部は気温の差が大きく、それが野菜を滋味深い味わいに育てるとも言われている。その中でも三次盆地(みよしぼんち)では様々な野菜が作られているが、平松大樹シェフがどうしてもという強いこだわりを示すのが、“おかもと農園”で作られているグリーンアスパラガスだ。

“おかもと農園”はご主人の岡本明憲さん、久美さんご夫妻が丹念に心を込めてアスパラガスを育て上げている広島でも屈指の農家だ。

岡本明憲さん、久美さん

「もともとは養鶏場を営んでいたんですが、今から30年ほど前にアスパラガスを作り始めて、その時の株が今でも立派なアスパラガスを生んでいますよ」。

夫婦二人で山を切り開き、お互いに切磋琢磨しながら“量よりも質”を大事にしたいというご夫妻の愛情で育てられたグリーンアスパラガス。

「とにかく、“おかもと農園”のアスパラガスは味の深みや、シャキシャキした歯ごたえ、瑞々しさが他とはまったく違います」。という平松シェフの言葉通り、この農園で生まれたアスパラガスは、全国のシェフたちからも注目されているという。

「その場で食べて見てください」岡本さんに勧められて口にした採れたてのアスパラガスは、同行していた“レストランひらまつ広尾”のスタッフたちにも大きな感動を与えていた。

左から レストランひらまつ広尾シェフ・平松大樹、支配人・後藤隆浩、サービス 河野雅美

我が子のように育てる

「最初は露地で育て始めたのですが、気候の変動が大きいのでハウス栽培へと変えました。それでも冷夏や大雪、大雨など、一つとして同じように育てられる年はありません。だから、毎年が勉強なんです」。とにかく降雨量の多いことで知られているエリアなだけに、大雨の被害にあうことも少なくないという。

「だからというわけではないですが、一年のうち8ヶ月は一日も休むことなくこの子達の生育を見て回りますよ」。この子達。愛情を込めてアスパラを呼ぶ奥様の久美さんの一言から、どれだけ愛情深く育てられているかがわかる。

「アスパラの太さや味の良さは、やはり地面の下で生育を支える株の元気さによります。ウチで一番古い30年ものの株から育つアスパラガスは、太さもとても立派ですが、それ以上にみずみずしさや深い旨みが違います」。そう自信を持って岡本さんがおっしゃるように、このアスパラガスでなければできない料理があるのだと、平松シェフは言う。

深い山あいの村で、丹精込めてアスパラガスを育てる岡村さんご夫妻。作物の美味しさにも愛情が含まれている、そんな気さえするのだった。ただ高齢なお二人なだけに後継者がきちんと育つことも大きな課題の一つ。どうか、愛情深く野菜を育てる若き後継者が現れんことを祈るばかりだ。

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text :
Paragraph Ltd.
Photography :
Masashi Nagao
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